水道管路の老朽化の現状と水道料金への影響について
1 水道管路の老朽化の状況
国土交通省の調査(令和5年)によると、全国の水道管のうち約15%が耐用年数(一般に40~50年)を超過している状況にあります。
また、NHK調査(令和3年度)を基にJichitai Worksが整理したところ、全国の配水管延長の約2割(17.6万km)が耐用年数を超過しており、管路の更新率は年間0.65%程度にとどまっています。この更新ペースのままでは、全ての更新に130年以上を要する見込みです。
都道府県別にみると、老朽管率が最も高いのは大阪府(33.1%)であり、都市部の大阪市では50%を超える例も確認されています。神奈川県(30.3%)、香川県(30.9%)なども老朽管の割合が高く、一方で栃木県(15.7%)、山梨県(16.4%)などは比較的低率にとどまっています。
2 水道料金への影響
(1)老朽化による維持管理・更新費用の増加
老朽管の更新には多額の費用が必要です。A市水道局の試算によれば、1kmあたり3,000万~5,000万円程度を要するケースもあります。このため水道事業者(市町村、広域企業団)は、これらの更新費用を賄うために水道料金を改定(値上げ)する事例が多くみられます。
また、老朽化が進むと漏水リスクが増大し、浄水場で作られた水が配水途中で失われることで、収入に結びつかないコストが発生します。これも水道料金を押し上げる要因です。
(2)人口減少・節水の影響
人口減少や節水機器の普及等により水需要は減少傾向にあります。水道事業は規模の経済性が高く、給水人口が減少しても管路や浄水場等の固定的な維持管理コストは大きく減少しないため、1人あたり(あるいは1世帯あたり)の負担が増大しやすい構造にあります。
水使用量が減少することで、同じ総コストを回収するためには単位水量あたりの料金(㎥単価)を引き上げる必要が生じます。
3 料金体系と地域差
(1)メーター口径別の料金体系
多くの自治体では、基本料金をメーター口径(13mm、20mm、25mm等)によって設定しています。これは大口径のメーターが一般に多量使用を可能とし、防火設備を備えた住宅・工場などに必要となるためです。しかし、実際の使用量が少なくても口径が大きい場合は、基本料金が割高となり、負担感が大きくなるケースがあります。
特に、過去の新築時に大口径メーターが設置された住宅が、現在の生活規模に比べて過大な基本料金を負担している例も確認されています。
(2)用途別料金と格差
用途によっても料金単価が異なる場合があり、家庭用より営業用・工業用の方が高い単価が設定されることが一般的です。逆に、大規模工場などでは地域経済振興の観点から割安に設定されている事例もあり、家庭用との料金格差の一因となっています。
これらは地域の産業構造や歴史的経緯によって決まっている場合が多く、近隣市町村であっても負担感に大きな差が生じる場合があります。
4 水道料金改定の動向
近年、老朽管更新や震災対応、人口減少による固定費負担増などを背景に、多くの自治体で水道料金の改定(値上げ)が行われています。
令和7年5月時点の全国大都市平均(20㎥使用時)は月額約2,761円で、前年比+2.94%の上昇となりました。
主な改定事例として以下が挙げられます。
自治体 改定率(前年比) 主な要因
| 自治体 | 改定率(前年比) | 主な要因 |
|---|---|---|
| 新潟市 | +29.52% | 老朽化対策・財政健全化 |
| 相模原市 | +19.09% | 管路更新事業 |
| 神戸市 | +14.16% | 震災後の再更新・山間配水 |
| 福岡市 | 約+10%(2025年4月) | 設備強化 |
| 札幌市 | 約+18% | 老朽更新 |
| 千葉市 | 約+15%(2025年4月) | 同上 |
| 浜松市 | +17.9%(2025年10月予定) | 更新財源確保 企業債・減免措置併用 |
特に浜松市では、企業債の活用や半年間の従量料金4割減免措置を講じるなど、利用者負担の平準化に配慮した対応がみられます。
5 今後の対応について
水道管の老朽化は更新費用や漏水損失を通じて水道料金に影響を及ぼす重要な課題です。また、人口減少・節水化に伴う水需要減少は固定費を少人数で負担する構造を強め、単価上昇を招いています。
水道事業体においては、計画的な管路更新、料金体系の適正化、国庫補助や地方交付税の活用、さらには一時的な料金減免措置など、多角的な負担軽減策を検討することが望まれます。
参考:
https://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list8/r149/r149_09.pdf(財務省)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/prifr/149/0/149_202/_article/-char/ja/(J-STAGE)
https://www.mlit.go.jp/common/830003739.pdf(国土交通省)
